最後の親孝行~母への想いを込めたお葬式~

自由葬もしくはオリジナル葬って聞いたことありますか?
この葬儀のネーミング自体がオリジナルなので
「自由葬とはこういうものです」
という決まりはもちろんないのですが、簡単に説明すると、
宗教や形式にとらわれず、
亡くなった方の人柄や想い、その人らしさを
遺族が最大限にあらわして故人を偲ぶお葬式

ということになるでしょうか。

言ってみれば、私の母の葬儀は自由葬でした。
うちは無宗教なので、
お葬式=お坊さんを呼ぶ という考えにはならず、
じゃ~、どういうお葬式にしようか?
と、葬儀社の担当の方に色々聞きながら、
父と妹と私の3人で考えました。

当時は終活なんて言葉はなかったし、
60代だった母とは「死んだらどうしてほしい」
なんていう話はしていなかったので、
遺された私たちは
「お母さんだったらこういう方がイイよね」
「お母さんはこういうの嫌いだよね」
「お母さん喜んでくれるかな」
という母への想いが葬儀を作るベースになります。

棺は白木のものより柄がある方がいいね。
この柄、お母さんらしいんじゃない?

お花はこの写真のプランからしか選べないんですか?
お母さんはお花が好きだったから
色とりどりのお花が咲き乱れてる感じにしたいな。

ディスプレイどうする?
お母さん、写真クラブに入ってた時に撮ってた写真
いっぱい飾って個展みたいにするのはどう?

お坊さんのお経がないなら、何か音楽かけなきゃね。
オリジナルのCDがあるんですか?
でもしんみりした感じの音楽は嫌だなぁ。
生演奏とかどうだろう?

母が亡くなった数時間後の打ち合わせだったので
当然泣きつくした状態ではありましたが、
元ウェディングプランナーの血が騒ぐというか、
結婚式の打ち合わせに似ているなぁと思うところが多々あって、つい熱が入ってしまいました(笑)

ちなみに、棺は白木じゃなければ料金は上がるし、
生演奏はもちろん別途料金(ウェディングよりは低料金)。
お花のプランは元々高い(ウェディングも同様…)上、
プラン外のリクエストは当然加算されるので、
「このプランの範囲内でこういう花は入れられますか?」
というような交渉をしたりしました。

担当者の方に
こんな注文の仕方、やりづらいですよね…と言ったら、
「いや、逆にやりやすいです(^^)b」
と言っていただけて(気を遣ってると思いますが)かなり安心しましたよ(^^;)

葬儀の費用については、またの機会にお伝えしたいと思います。

会場となる部屋にアップライトピアノが置かれていたので
ピアノとバイオリンの生演奏を依頼しました。
せっかく生演奏になさるなら、式の途中で『献奏曲(故人に捧げる曲)』を演奏してもらったらいかがですか?
曲もリクエストできますよ♪
と担当の方からのアドバイス。

式全体の曲目(BGM)については、
明るめのクラシックでお任せしたものの
式次第に入れる『献奏曲』の1曲を絞るには
今すぐの回答は難しくて
「今日中に決めるので時間もらっていいですか?」と
家に帰って久しぶりにピアノを弾きながら選んだ1曲は…

イタリア歌曲『オンブラ・マイ・フ』
(『ヘンデルのラルゴ』とも題されています)
だいぶ前ですがCMなどでも使われていたので、一度は耳にされたことがある曲だと思います。

メロディーをバイオリンの演奏者にお願いし、
この献奏曲だけは、私がピアノを弾くことにしました♪
多分、お母さんは久しぶりに私のピアノも聴きたいだろうな~って思ったし。

とはいえ、ピアノを人前で弾くのは久しぶりだったし
練習する時間もあまり無く、まして葬儀の後半での演奏。
泣いてて弾けない…なんてことになったらどうしよう…
と色々と不安材料を抱えて迎えた当日。

母の友人からのメッセージや孫から手紙の朗読の後、涙腺崩壊真っ最中の時に私の演奏の出番がやってきます。
「ひゃ~アカン~」と思いながらピアノの前に座ったら、
何だか急に冷静に…。
お母さん、聴いててね♪
と心の中でつぶやいて、鍵盤に手を乗せた時には全く涙なく。

緊張で少しアップペースになった私の前奏を
バイオリニストの第一音がゆったりとした演奏に変えてくれました♪
なんて深い、なんて気持ちのこもった音色!
バイオリンの音が全身に響き渡るような感じでした。

この『オンブラ・マイ・フ』
列席してくださった方の多くの涙を誘ったようで
「お母さん、絶対喜んでるよ」と、
皆さまから温かいお言葉をたくさんいただき、
母の最後に、私もようやく親孝行ができたのかな…と思うことができました。

葬儀が終わった後、演奏者にお礼をお伝えしたところ、
バイオリニストの方が

私の母も鈴木さんのお母様と同じ66歳なんです。
母のお葬式なんて想像したこともなかったけど、もし母が亡くなったら、私こんなふうに演奏してあげられるのかな~って思って…。鈴木さんのお母様への愛をものすごく感じました。
葬儀の仕事で、弾きながら泣きそうになったのは初めてでした。今日、お式に出させていただけたことに本当に感謝しています。

と涙をポロポロとこぼされて想いを伝えてくださいました。
思い出しただけで涙が出るくらい嬉しかったです。

いつの間にか、話が演奏のことに集中してしまいましたが、
葬儀は亡くなった方のために行うもの…であると同時に
遺された家族が、故人の生きてきた証を受けとめて、
気持ちを整えるための儀式
だとも私は思います。

私の母の場合は無宗教だったことから
『自由葬』というスタイルを選びましたが、
入っている宗教の形式に添う形であっても、
葬儀社のプランで行う形であっても、
遺された皆さんが、亡くなられた家族への想いを込め、
心から偲ぶことができれば、それが一番のお見送りなのかと。

もちろん、できれば元気なうちに
「わたしのお葬式はこうしてほしい」と家族間で話し合うことが、一番いいと思っています(^^)

「こういうお葬式ができたらいいな」というご希望やご意見があったら、ぜひお聞かせください♪♪♪

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