前回のコラム
『亡くなった人の家の名義を変えるには?』で
相続登記の手続き内容や費用について、そして
相続登記には期限がないということ、
だから、亡くなった人の名義のままの家がけっこう多い…
ということなどをお伝えしました。
このコラムからお読みになられた方や
「前回読んだけど忘れちゃった…」と言う方は、ぜひ
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前回の投稿をご一読くださいませm(__)m
相続登記の手続きは、案外面倒くさいしお金もかかる…
でも、その手続きをせずに放置しておくと
もっと面倒で余計にお金がかかることになります。
今回は、相続登記の専門家、司法書士さんからお聞きした、
「そのままにしていた場合どんなことが起こりうるのか」
実際にあった事例を元に分かりやすくお伝えします。
相続人の一人が認知症になったケース
≪長男Tさんの事例≫
実家で一人暮らしをしていたお母さんが認知症に…。
Tさんは妹(お母さんにとって長女)さんと話し合って、お母さんの介護施設の入居を決めました。
そして入居後に実家を売り、そのお金を施設の費用にあてようと考えていたそうです。
実家の売却にあたり、
まずTさんが実家を相続して、手続きしようとしたところ
実家の名義が、亡くなったお父さんのままになっている(相続登記がされていない)ことが判明しました!(´゚д゚`)
…ということは、現時点では、
亡くなったお父さんが『被相続人』で
お母さんと長男Tさんと、妹(長女)さんの3人が
『相続人』になっているということ。
本来なら、遺産分割協議で「Tさんが単独で実家を相続する」
と相続人全員が承諾して、署名捺印すれば、
実家の売却手続きはTさんが行えます。
…が、お母さんが既に認知症になってしまっているため、
お母さんの意思確認ができず
(無理やり署名捺印させてしまうと無効になります)
遺産分割協議が事実上できません。
そのため、Tさんが実家を単独で相続するのではなく、
お母さん・Tさん・妹さんの3人を共有名義(法定相続割合に応じて)にする相続登記を行ったうえで、実家を売却することになりました。
法定相続の登記により、3人の持ち物となった実家。
これを売るため、本来ならば3人が売主となり、
3人全員の同意が必要になりますが
認知症で判断能力が不十分だとされるお母さんは
売主となることができないのです…(:_;)
この場合、法定後見人(お母さんの財産を管理する人)をつける必要があり、家庭裁判所に後見人選任の申し立てを行わなければなりません。
そして、その法定後見人には毎月2~5万円の報酬を支払っていくことになります。
後見人は一度就任したら、認知症が治らない限り一生外すことができないので、施設の費用以外に、後見人への報酬もずっと払い続けるということに…。
お母さんがお元気なうちに相続登記をしていれば
後見人をつける必要もなく
これほどの時間とお金をかけずに実家を売却できた…という事例です。
お聞きしたトラブル事例は他にも色々あり、
どれをお伝えしようか迷っていたところ
前回のコラムをお読みくださった一般の方から
「うちでもこういうことがありました」という
貴重な体験談をいただいたので、
こちらを載せさせていただきたいと思います。
親族同士の『争続』が起きたケース
≪Kさんのお母様の事例≫
私の母の話です。母は4人兄弟の末っ子。
兄弟構成は、長男・長女・次男・次女(⇐母)。
長男・長女は同じ県内でも、祖父母の家から少し離れたところに持ち家がありました。
祖父母の家には次男が一緒に、
私の母は、その祖父母の家の近くに住んでいました。
30年ほど前に祖父が亡くなって、
家は祖母と次男の二人になり、名義は祖父→次男に変更。
建物の老朽化と、年老いた祖母のためにと
バリアフリー住宅にする必要を感じた次男は
思いきって家を建て直しました。
ところがローンを返し終わる前に、
なんと祖母より先に次男が亡くなり、
その半年後に祖母が亡くなってしまいました。
住宅ローンは次男が加入していた生命保険で完済しており
「誰もいなくなってしまったこの家をどうする?」という
話し合いが長男・長女と私の母(=次女)でなされました。
結果、祖母と次男が住んでいた家を母が相続して住むことに。
面倒くさいことが嫌いな母は、名義の書き換えをせず相続。
その後、5年くらい経ち、今度は長男が亡くなってしまいました。
ある日のこと、母宛に裁判所から手紙が届きました。
亡くなった長男のお嫁さんからの手紙で、「祖母と次男が住んでいた家が欲しい」という内容…(゜o゜)ヘ?
相続登記をしていないので、次男名義のままの家は長男も相続人になるわけですが、その長男が亡くなると、長男とお嫁さんの子どもが相続人となる・・・。
つまりお嫁さんは「次男名義のままの家は私の子も相続できる権利がある」と主張しているということ。
母(次女) vs 長男の嫁 ・・・勃発 Σ(゚□゚;)
面倒くさがって名義変更をしなかったがために起きた争族。
長男の嫁から恨みつらみをぶつけられたあげく、結局お金で解決することにした母。
母は名義変更するために相続の対象となる人をすべて洗い出し、対象者に相続放棄のお願いをし、何とか名義変更は終了しましたが…。
『面倒くさい』の代償は、何百万円のお金と何十時間もの時間と親族関係の崩壊へと高くついてしまいました。
思ってもみなかった裁判をおこされたことから
『相続』が『争族』に発展していくのを
目の当たりにした私は
協議の内容を正式な書面にして証拠を残すことと
不動産の速やかな名義変更が
どれほど大事かを学びました。
Kさん、貴重なお話をありがとうございました。
ドラマのような話ですが、実際に起こったことです…
実は司法書士からお聞きした事例の中にも
亡くなった相続人の子から
「法定相続分の金額を払ってほしい」と
要求されたというケースがありました。
『亡くなったおじいちゃんの家は〇〇が相続する』と
兄弟姉妹みんなで話し合って決めたとしても、
その家の登記をきちんと変えていなければ、
数年後、いや時間が経てば経つほど、様々な問題が起こりうるんですね…
思い当たる方がいらっしゃったら、
いま一度、名義を確認してみてください。
その家の相続人は誰なのかということも是非。
司法書士さんからお聞きした他の事例は、
徐々にUPしていきますね!
また、不動産の相続は奥が深く、もっと詳しく知りたい!というお声もいただいているので
今後、これに特化したセミナーを企画しております。
「こういうことが知りたい」というご意見や
「うちってどうなんだろう?」というご相談は
いつでも遠慮なく こちら にお寄せくださいませ(^^)/
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